『進取の気象』​​​​​女子修身 常に高みを目指して己を磨け!本日は戦前の女子教育から・・・

中等修身

​​常に高みを目指して己を磨け!本日は戦前の女子教育から・・・

女子修身 巻一 昭和4年発行 9年改訂​​​​​​​​​​​​​
第十四課 進取の気象
進取の気象
​​ 私達が​​​​​​常に​​​​現在よりも一層高い望みを立てて如何なる難儀にも気を
屈せず努力を重ねて行くのを進取の気象と言う。例えば、私達が算術の難問を与えられた時、一寸考えてみて「これは難しい。」と思い、進んで解こうとする気力を失って、投げ出してしまうようなのは、進取の気象とは似ても似つかなぬ意気地なしである。これに反して「これは難しい。」とは思っても、それでぐったりとせず「なに、この位の問題に」と気を取り直して、あゝも考え、こうも工夫して、どこまでもそれを解こうと努力するのが進取の気象である。

『何のその 岩をも通す 桑の弓』 という句は、よくこの気象を言い表している。

​進取の気象と進歩​
 私達は常に一段高く上り、一歩前に進みたいと願っている。しかし、気だけどんなにあせっても、思い通りになるものではない。それで私達は高い希望を抱くと共に、どこまでも努力して突き進む気象を持つ事が大切である。人には生まれつき色々な差別があって才能も一様ではないが、どんな人でも人並み優れたものになるのには、人一倍この気象で務め励むことがなければならぬ。すべて成功のうちには人知れぬ苦心が潜んでいるのである。天才と言われる頼山陽(らいさんよう 江戸時代後期の歴史家・思想家)も「自分を才子と言う者は、まだよく自分を知らないものである。自分をよく刻苦すと言う者は真に自分を知る者である。」と言っている。

 生まれつき才能のある者でも、努力しなければ凡人となってしまう。また非凡な者でなくても、絶えず努力して止まなければ、やがては思う事を成し遂げる事が出来るのである。

困難に打ち立て
 世には仕事の初めには盛んな意気込みであっても、途中で少し困難が増してくると、ぐったりしてしまう者がないでもない。これではどれほど才能があっても、成功は覚束ない。困難は仕事に付きもので、事の進むと共に増して行くのである。目的が大きければ大きいほど尚更そうである。難儀に出会う毎に益々勇気を奮い起こし、だんだん困難に打ち勝って行くように心掛けねばならぬ。一体、難易という事は私達の心から来る事が多い。だから難儀だと言って途中でくじけるのは、自分の力を十分に信じないからである。困難は人を玉にする。才があってもあてにするには足らない、才が無くても悲しむに及ばない。しかし進取の気象のあるとないとは成功・不成功をはっきり決めてしまうものである。

​努力の工夫​
 世の中には運不運という事がある。運や僥倖を頼りにするものは、時には成功するかも知れないが、やがて水の泡のように消えて行く。人事を尽くして天命を待つということがある。私達の頼るべきは何と言っても健実な不断の努力である。

 しかし「労して功なし。」という事もある。これは多くは努力の仕方を誤っているのに起因するのである。だから私達は仕事を始める前に、まずその事の善悪を考え順序を立て、方法を定めてするようにし、いよいよ始めたならば、全力をそれに注ぐようにせねばならぬ。そしてどんな困難に出会っても、志を変えず努力を続けて行けば、きっと成功する。なお体の健康は成功の本であるから、これに気をつけねばならぬことは言うまでもないのである。

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